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選手、コーチ、監督、フロントとして西武ライオンズの栄光と苦悩を20年にわたり経験してきた渡辺久信。その渡辺がシニアディレクターとして球団フロントにいた2016年ドラフト会議、指名選手決定のウラ側とは。渡辺が野球人生を回想した書籍『獅子回顧録』(カンゼン)から一部抜粋して紹介する。〈全2回の1回目/第2回へ〉

ドラフトでは、1位で作新学院高の今井達也を指名した。夏の甲子園の優勝投手である。大学生、社会人を含めて、「ナンバー1投手」との評価で、単独で獲得できたときにはホッと胸をなでおろした。細身の体でありながら、投げるボールが強く、ストレートも速い。いずれは、西武のエースとして投手陣を引っ張ってほしいと期待をかけた。
ドラフト直前の“駆け引き”

 ドラフトの前に、「1位は今井達也でいきます」とマスコミに公表している。1球団でも重複指名を減らしたい思惑があったが、その思惑通りに🐉が今井から明治大の柳裕也に変更したと、後日知った。たしか、ドラフト当日の中スポに「🐉の1位は今井達也」と報じられていた記憶がある。中スポが書くということは、かなり信頼できる情報と見ていい。ところが、蓋を開けてみると🐉の1位は柳。ドラフトのあと、🐉で監督をしていた森繁和さんから、「ナベ、ふざけんなよ!」と電話があった。西武の1位公表を見て、柳に替えたということだった。

 当時の作新学院高には、明大からDeNAに入団する入江大生もいた。入江も本格派の好投手だったが、うちのスカウト陣は今井を推していた。ただ、春の大会を見に行っても、今井は背番号18を着けていて、試合ではまったく投げない。ブルペンで投げるところを少し見ることができたが、力を入れていないので、「ヒジの使い方が柔らかい」というぐらいしか評価できなかった。
「早く負けてほしい」スカウトの本音

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