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>>68
一周したことのある人のみが到達する境地
昨シーズン、二度のファーム降格を経験した栗山が得たものとは
ファームにまったく縁がなかったわけではありません。春季キャンプなどでは、僕はB班を経験しています。
ただ、シーズンに入ってからのファームの雰囲気というのは、キャンプの時期とはまったく違いました。
誰もが鬼気迫る様子でバットを振り、ボールに飛びついていた。みな懸命でした。勝手に教育リーグのようなイメージを持っていましたが、そこは紛(まが)うことなき真剣勝負の場だった。いつか成果を出せるように、ではない。今すぐ成果を出すために、みんなが必死でした。
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最初の遠征は楽天戦。宿舎として準備されていたのは、小さなビジネスホテルでした。部屋の大半を占めるベッドに座ってみると、とても硬かった。
これで明日の試合に向けて準備しろというのか……思わずスマホを手にしました。マネージャーに電話をして、ホテルを変えてもらおう、と。
でも、すんでのところで思いとどまりました。チームメートが真剣にプレーしている姿が思い浮かんだからです。
◇
真剣勝負を重ねる中で、ファームのみんなと話す機会を持てたこと。それは僕にとって、とても貴重な経験になりました。
みんな必死だから、かもしれませんが、20近くも年齢が離れた僕に対しても、遠慮なく意見を求めてくるんですよね。教えることは最大の学び、とよく言われますが、まさにそうでした。一番の学びは「プレーの課題は、おおまかに言えば万人に共通」ということです。
若い選手、これからの選手に対しては、最初は「自分は若いころはこんなことを考えていた」というような話をしていました。でも、よくよく考えてみると、今の自分がこだわったり、悩んだりしていることと、そんなに遠い話じゃないんですよね。「ビジターの球場の中には、ピッチャーの背景的に集中しにくいところがある」とか。「晴天だとより難しいからどうしよう」とか。
若いころの自分と今の自分とで、考えていることにそんなに大きな違いはないし、つまりは若い選手と自分が考えていることにも差はない。そして、突き詰めて考えていけばいくほど、逆に「打撃は結局のところ、タイミングと力感」というような普遍的なところに全部おさまっていく。そんなことに気づかされました。
ものすごく面白いことだと思うんですよね。僕は23年間、ずっと野球のこと、打撃のことを考え続けてきた。その結果、議論は一周回って元の場所に戻ってくるわけです。ちょうど360度。同じところに戻ってきた。
でも、これは「23年かけて無駄足をしてしまった」というようなことではないと確信しています。一周してみたことがある人じゃないと、いまいるこの場所が、かつて立っていた場所と同じであることには気づけないんじゃないのかな、と。
by🐟

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