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井上一樹監督(53)に、チーム再建の任が託された。決してエリート街道を歩んできたわけではない竜将の人生には、いくつかの転機があった。出会いを逃さず、運命を切り開いてきた男。その源流を4回連載で振り返る。

 井上の人生最初の転機は1986年。中学3年の夏休みに上京し、大相撲の井筒部屋を訪れた。当時は現役力士だった逆鉾と寺尾ははとこにあたり、ごちそうに東京見物にと歓待された。

 ただの旅行ではなく、角界入りを前提とした部屋見学。「もともと、そうなるものだと思っていた」。井上の気持ちも固まった。「力士になる」。父にも学校の教師にも一度はそう伝えた。しかし、腹の底でくすぶっていた野球への未練に火が付いたのは、帰郷した後に何げなくつけたテレビに映っていた左投手だった。

 「野球もしたい。そう思っていたところに夏の甲子園。画面には享栄の近藤真市ですよ。三振取ったら打者をにらみつけて、ものすごくかっこよく見えた。あぁ、こんな投手になりたいってね」

 角界入りで決まっていた進路は土俵の中央に戻っていた。マゲか。はたまた、丸刈りか。迷った末に高校野球が相撲を寄り切ったのは、9月のことだった。近藤が躍動した夏の甲子園で鹿児島商を4強に導いた塩瀬重輝が、井上をスカウトに学校までやってきたのだ。

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