井上監督は怒っていた。厳しい表情で高橋宏を呼び付ける。予定の5イニングを投げ終えた右腕に顔を近づける。開幕指名した右腕のメンタルを引き締めた。
「昨季必死にやって、周囲から無双なんて言われた。『全力疾走、カバリングを忘れたことあったのか?』『きょうはどうしたんだ?』と。聞いたら『悪送球してしまったという感情が勝った』と。だから『やることはやれよ』と。やってしまった瞬間に『おまえの仕事は何だ』ってこと」
居ても立ってもいられない場面は5回1死二塁。背番号19はクルッと回って二塁へけん制球した。左側へそれた。二走・太田は三塁を狙う。ボールを処理した中堅・岡林が三塁へ投げた。これもそれた。
ここで問題のシーンが訪れた。三塁後方にバックアップに入っているはずの高橋宏がマウンド上で成り行きを見つめていた。ルーキー捕手・石伊はたまらず本塁を空けてファウルゾーンへ走った。声を掛けられてハッとした右腕はホームへ駆けたが時すでに遅し。本塁を陥れられた。
指揮官の使った表現は「自爆」だ。直後、宗に四球を与え、麦谷の右飛をブライトが目測を誤って頭上を越された(記録は二塁打)。二、三塁で来田に左翼線へ2点二塁打を浴びて、1イニング3失点となった。
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